個人から法人化した場合の建設業許可|承継か取り直しかを行政書士が解説
この記事はこんな方へ
「個人事業主として建設業許可を取得しているが、法人化を考えている」「法人化したら許可はどうなるのか」という方に向けて、令和2年改正後の選択肢と手続きを解説します。
法人化したとき、許可はどうなるか
個人事業主として建設業許可を取得している状態で法人化した場合、許可は自動的に法人に引き継がれません。個人の許可と法人の許可は別物だからです。
対応方法は大きく2つあります。
方法A|従来どおり:個人の許可を廃業して法人で新規申請する 方法B|令和2年改正の制度:事業承継認可申請で許可を引き継ぐ
令和2年10月の建設業法改正により、個人から法人への許可承継が正式に可能になりました。どちらの方法を選ぶかは状況によって異なります。
方法A|廃業+新規申請(従来の方法)
個人事業主として取得していた許可の廃業届を提出し、法人として新規に許可申請を行う方法です。
メリット 手続きの流れが明確で、一般的な許可申請と同じプロセスで進められます。
デメリット 法人の新規申請には審査期間(東京都知事許可の場合、申請受付後25日・閉庁日除く)がかかります。この審査中は法人として500万円以上の工事を受注できない「無許可期間」が生じます。また許可番号が変わるため、取引先への通知が必要です。
💬 行政書士より: 「廃業届と新規申請を同時に提出すれば無許可期間が生じないのでは」と思われる方がいます。しかし個人と法人の許可が重複することはできないため、実際には無許可期間が生じます。この点が方法Bを選ぶ主な理由になります。
方法B|事業承継認可申請(令和2年改正の新制度)
個人事業の許可を廃業せずに、事前の認可申請を経て法人に許可を引き継ぐ方法です(建設業法第17条の2)。
メリット 無許可期間が生じません。許可番号をそのまま引き継ぐことができます。新規申請の手数料(9万円)が不要です(認可申請は手数料なし)。
デメリット 手続きが複雑で、事前に東京都建設業課との相談が必要です。スケジュール管理が厳格で、期限を過ぎると申請を受け付けてもらえません。書類の種類も多く、新規申請と同程度の準備が必要です。
事業承継認可申請の重要な条件
方法Bを選ぶ場合、以下の条件を理解しておく必要があります。
① 承継するのは個人が営んでいた建設業の全業種 一部の業種だけを法人に承継することはできません。たとえば個人で内装仕上工事業と大工工事業の許可を持っていた場合、両方を法人に承継する必要があります。一部だけ承継したい場合は、認可申請前に不要な業種の廃業届を提出しておく必要があります。
② 承継先の法人も許可要件を満たす必要がある 法人として経管・専任技術者・財産的基礎・社会保険加入などの要件をすべて満たしていることが必要です。
③ 事実発生前に認可を受けることが必要 法人への事業譲渡(承継)が行われる前に、認可を受けておく必要があります。承継後に遡って認可することはできません。
④ 東京都の申請受付期間は「承継予定日の2か月前から25日前まで」 この期間を過ぎると申請を受け付けてもらえません。余裕をもった準備が必要です。
💬 行政書士より: 事業承継認可申請は比較的新しい制度で、手続きが複雑です。特に社会保険の移行タイミングと専任技術者・経管の常勤性の確認は細心の注意が必要で、タイミングを誤ると許可取消しになるリスクがあります。法人化を検討し始めた段階で、早めにご相談ください。
どちらを選ぶべきか
| 方法A(廃業+新規) | 方法B(承継認可) | |
|---|---|---|
| 無許可期間 | 生じる | 生じない |
| 許可番号 | 変わる | 引き継げる |
| 手数料 | 9万円 | 不要 |
| 手続きの複雑さ | 比較的シンプル | 複雑 |
| スケジュール | 比較的柔軟 | 厳格(2か月〜25日前) |
無許可期間を避けたい・許可番号を維持したいという場合は方法Bが有利です。ただし手続きが複雑なため、行政書士への依頼を強くおすすめします。
急いでいない・手続きをシンプルにしたいという場合は方法Aの方が現実的な場合もあります。
法人化前に確認すべきこと
どちらの方法を選ぶにしても、法人化前に以下を確認しておくことが重要です。
法人の代表者(予定者)が経管の要件を満たすかどうか。個人事業主が法人の代表取締役に就任する場合は比較的要件を満たしやすいですが、別の人物が代表者になる場合は5年以上の建設業経営経験が必要です。
また、法人設立後の社会保険加入が必要になります。個人事業主時代に建設国保に加入していた場合、適用除外の手続きが必要になるケースがあります。この点は社会保険労務士との連携が必要になることもあります。
まとめ
個人から法人化した場合の建設業許可は、廃業+新規申請か、事業承継認可申請かの2択です。令和2年の改正により承継が可能になりましたが、手続きが複雑で期限管理が厳格なため、法人化を検討し始めた段階で早めに動き始めることが重要です。
法人化と建設業許可についてご相談したい方へ
「法人化のタイミングで許可の手続きをどうするか相談したい」という方のご相談を承っています。状況をお聞きした上で、最適な方法をご案内します。


